ヴァラナシ 1日目

着いたー。
リクシャを拾って、さっそくガンジス川沿いに。
観光地では当たり前の、群がるオートの客引きを払い除け、
サイクルリクシャに寝転がって休憩中みたいな若者を見つけ、
ガンガ(ガンジス川)まで、とお願いしたら
なぜかちょっと困惑したふうで、
そこですかさずどこからともなく客引きの男がしゃしゃり出てきて、
ガンガって言ったらここの地名もガンガだよ!と私に言う。
たしかにヴァラナシのことをガンガとも言う。
あれ、でも前は“ガンガ”と言えばダシャシュワメダまで着いたのにな。
じゃあ、ダシャシュワメダガートに、とお願い。


聞けばそのこぎ手の若者はヴァラナシっ子ではなく、
ラジャスタン州ジャイプールからわざわざ出稼ぎに
来ているのだった。だから反応悪かったんだな。
ジャイプールと言ったらインド屈指の観光地なのに、
どうして地元で働かないでわざわざ遠くヴァラナシまで
来てるのかと率直に聞いてみたら、
ジャイプールには仕事がないのだそう。
ヴァラナシもジャイプールもリクシャは溢れてると思うけど。


駅からダシャシュワメダ、という観光客の黄金ルートさえも知らない
どうにも頼りないそのこぎ手の若者は、
途中、同業者に道を尋ね尋ね、尋ね尋ね、尋ね尋ね…、
さすがにもう着いてもいい頃になってもまだひたすら走り続けていて、
私が「あ、あのー…」と一言物申そうとすると、
もうすぐ着くから待って!とばかりに私を手で制する。


ヴァラナシにもこんな通りがあったんだなーと
ムスリム街をぽかんと眺めていると、
こぎ手の若者、また道を訊いている…。
そして相手のヴァラナシっ子に
「ダシャシュワメダ?あんた、どこに向かってるんだい?」と
突っ込まれ、それなら逆方向だと教えられて方向転換、
そうこうするうちにようやく見覚えのある街並みまで辿り着いた。
駅からそんなに遠くないはずなのに、やけに時間がかかった。
ヴァラナシの大通りの街並みはずいぶん変わったように
目に映った。それもそのはず、あれからもう5年も経ってる。


バックパックを背負って真っ直ぐ、5年前、2ヶ月ちょっと滞在した
ゲストハウスに向かった。
シングルルームがあるか尋ねると、部屋をいくつか見せてくれた。
その案内してくれたスタッフ、私は覚えていた。
彼は気づいてない。はは、なんかくすぐったいような。面白い。
そのゲストハウスは増築して、3階建てから5階建てになっていた。
5階の1室に宿泊することに。
じつはあなたのこと、知ってるんですよ!と言ったら驚いていた。


荷物を置いて一休みしてから外出。
仲良くしてもらっていたシルクショップのお店に行くと
オーナーのアニキは昼寝中だった。
起こすと、最初は「えーと、誰だっけ。」っていう感じだったけど
なんとか思い出してくれた。
懐かしい話とか、当時の彼の仲間の近況とか教えてもらった。
あのときは英語で話してたけど、今はヒンディーで話せてるのが
なんか地味に嬉しかった。
彼の仕事仲間の一人で、グドゥーという男の子がいた。
私よりも5歳くらい年下なのに、ずっとしっかりしてて、コミカルで、
いつもみんなに気を配ってて、温かで、そして穏やかな人柄。
私はそんな心の広いお父さんのような彼を“グドゥー・ファーダル”
(“グドゥー・パパ”の意。)と呼んでいたのだけども、
彼の近況を聞いて、彼は私の中で永遠になった。
彼は数ヶ月前に自ら命を絶っていた。
すこしだけ涙がこぼれた。
オーナーのアニキが「どうして泣いてるんだ。」と聞くので
私は「泣いてないよ。」と言った。


18時までおしゃべりして、ガートで毎夕行われる
ヒンドゥーのお祈りを聞きに行った。
楽器の演奏とお祈りの歌と献火の儀礼が行われるのを
心地よい陶酔するような心持ちで一心に見つめていた。
これはガンガという女神を供養する日々のお祈り。
私はこのお祈りが大好き。
音楽と歌に合わせて、聖なるガンガの川面を白い布で
きゅっきゅっと磨く動作をしたり、
お花でやさしく撫でたり、団扇でやわらかな風を送ったりする。


懐かしい街並みを見ながら、店を冷やかし、
ダシャシュワメダガート周りの狭い地帯を一周して満足し、
部屋に戻った。

アグラ〜ヴァラナシ

アグラ郊外のツンドラ駅から、予約チケットなしで
スリーパーの車両に乗り込んだ。空いていそうな席を確保。
車掌が来たら追加料金を払おうと思っていたけど、来なかったから就寝。


ぐっすり眠ってさらに眠り、寝疲れた頃、
予定より2時間程度遅れてヴァラナシに到着。

アグラ〜ヴァラナシ 移動

ツンドラ方面に行くバスは、ツンドラ駅まで行くのかと思ったら、
薄暗い、とても中途半端なところで降ろされ、
そこからオートに乗り換えなければならないようだった。
適当に値段交渉してツンドラ駅へ。
結構ギリギリだった。
チケットを買って急いでプラットフォームに行ったけど、
全然列車が来なくて、駅員に聞いたら、
その列車はもう出たんじゃないかなーと心配になるようなことを言う。
すると、次にもう1本ヴァラナシ方面の列車が来るから
それに乗るように、列車の番号と時刻を教えてくれた。助かった。


ベンチに腰掛け、屋台の軽食を食べて一休み。
何はともあれ、列車があってよかった。
これで明日の午後には、インドで一番好きなところ、
ヴァラナシに着く。

タージ・マハル

オートを拾って、またタージへ。
今度はさっきほど行列が長くなかった。
チケット売り場付近で自称公式ガイドに声を掛けられ、お願いすることに。
おっさんの手引きでチケットを買ったら、
中で使う靴カバーと、おまけのミネラルウォーターを渡された。
外国人料金750ルピー。
インド人なら20ルピーとかで入れるはず。


おっさんがしてくれるのかと思ったら、若者が連れて来られた。
若者のガイドで入場、
今入ったのが西門、向かいに東門があるけど閉鎖されていて、
向かって右に南門、これはVIP用の門、
なぜなら北に世にも美しいタージ・マハルがあるから。



タージ・マハル廟へと続く正門。
ここから見るタージマハルで、タージマハルの建築では有名な
視覚的トリックの一つを体感することができる。
これは見に行った人にしかわからない!



正門をくぐってすぐに見えるタージ・マハル。
入場が18時半までで、18時に入ったからちょっと薄暗いけども。


残念ながら水が涸れた前庭を渡ってタージへ。
靴を脱ごうとしたら、足元が昼間の直射日光で熱くなっているから
靴を履いた上から先に配られたカバーをかけるように
ガイドの青年に言われた。


タージの中に入り、王妃のお墓のレプリカを拝み、
一旦外側に出て、もう一つの視覚的トリックを用いた建築様式の見所を
教えてもらった。面白い。


タージはライトアップされない。
なぜなら、素材の大理石が月光を透すため、
月の光を受けて青白く浮かび上がるのもタージの美しさの一つだから。
あー、せっかく月夜にアグラにいるのに、
もっとゆっくり見たかったな。
でもヴァラナシに行かなきゃ。
ちなみに、金曜日は入場料750ルピーが無料で入れるそう。
金曜日はイスラム教の礼拝日だから。
でもそのぶん来場者が多いのは必至だけど。


最後にお決まりのタージマハル民芸品店に軽く入り、
ガイド青年の案内でオートを拾ってアグラ・フォート駅へ。
駅で預けておいたバックパックを受け取り、
アグラ・フォート前のバス停で、
ツンドラ駅という鉄道駅に行くバスに乗った。
ツンドラ駅まで約1時間の道のり。

アグラ到着

ジャイプールのバスターミナルを出て、
バスの中で睡眠不足を補い、何度目かの浅い眠りから覚めると、
そろそろアグラっぽかった。
<タージ・マハル>なんていう道路標識が見えた。
しばらくして、アグラがどの程度の都市なのかが一目瞭然の
ちっちゃなバスターミナルに到着した。


ガイドブックによれば、アグラからヴァラナシに
国内線が飛んでいるということだったので
ちょっと奮発して国内線に乗ることを考えていた。
なので、まず予約を入れなければならないので、
適当な旅行代理店に入り、その旨尋ねると、
ヴァラナシには飛んでいない、と言う。
おかしい。ガイドブックには書いてあるのに。
単に仲介しない、という意味の
インド人的言い回しである可能性が高いので
その代理店を後にして外に出た。


バックパックを背負って、あてもなくてくてくと歩きながら
フレッシュジュースのスタンドに荷物を降ろして、
何度か利用していて信頼を置いているデリーの旅行代理店に
携帯電話からTEL、アグラに支店がないか尋ねると、
残念ながらなかった。
ヴァラナシに行きたいのだと言うと、
飛行機は飛んでないから、夜出る列車に乗るといい、と
さっきの代理店と全く同じアドバイスをしてくれた。
さっきの代理店は嘘つきではなかったようだ。


とりあえず、夜まで暇になった。
せっかくアグラに来たのでタージ・マハルを見ようと思い、
重いバックパックを預けるためアグラ・フォート駅までリクシャで行き、
そこで荷物を預けた。
数年ぶりに見るアグラ・フォート、を素通り。


オートリクシャを拾って、タージ・マハルまでと言ったのに、
タージ・マハルから少し離れた商店街口のようなところで
他に乗っていた乗客が皆降りた。
するとドライバーが私にも、はい、ここまで、と
訳のわからないことを言う。
それがあまりにも癪に触る言い方だったから私はお金を払わずに降りた。
やっぱりアグラのオートリクシャの悪評はそのままだ。
あんな感じの悪いインド人、初めて見た。


仕方ないので歩くことに。
途中で道を尋ねたら、そう遠そうでもなかったので、てくてく歩いた。


やがて、いかにもそれらしい巨大な門構え、
そして驚いたことに200〜300メートルくらいの観光客の行列が
できている。
こんなにたくさんの人と一緒に見るのは正直嫌だなーと思い、
見る気が失せたので戻ることに。


そのタージ・マハルの西門から真っ直ぐ走る通りをてくてく歩き、
サイクルリクシャを拾ってまたアグラ・フォートに出た。
アグラ・フォート周りは駅があるのもあって
たくさんの露天やら手押し車のお店が出ていて賑やか。
そんな中を冷やかしながら目的もなく歩いていあると、
現地人に声を掛けられ、まあ座りなよ、みたいな感じで、
チャイ飲む?と言うので、いらないと言うと、
ラッシーは?と言うので、
ちょっと恐かったけど、それをもらうことに。
なんと言っても、アグラの治安の悪さは
旅行者の間ではとても有名。
チャイやラッシーに何か入ってるかもしれないと頭の隅で思った。
その人はなんか、インド版ジャイアンみたいな人だった。


ジャイアンがタージはもう見たのかと聞くので、
あの長い行列を見たら見る気が失せちゃったよ、
ここからの眺めで十分と私は答えた。

するとジャイアンが、夕方行くといいと教えてくれた。


ラッシーをすすりながら、
ヴァラナシ行きのフライトの件をまた聞くと、
彼もやっぱりヴァラナシ行きは飛んでないよ、という。
だから列車で行きなよ、とアドバイスしてくれた。


彼はじつは旅行代理店で仕事をしているらしく、
チケットを予約したほうがいいからと言って、
その店舗までバイクに乗せてってくれた。
悪徳業者がどの観光地よりも多そうなアグラでこの行動は
われながら結構ギリギリライン。
代理店にはボスがいて、先の代理店の人と同じく、
夜9時15分くらいのヴァラナシ方面の列車に乗ればいいと教えてくれた。
経験上、当日のしかもヴァラナシ方面の予約チケットは
難しいだろうなーと思いつつ、ま、取ってても悪くないので、
お願いすることにした。
ボスがバイクに乗って、早速予約チケットを取りに駅に出掛けた。
私は簡素な代理店でしばし待機。
今はオフシーズンだから仕事がないのだとジャイアン
アグラはもはや仕事がないから、次のシーズンには
彼はデリーに行くのだとか、そんな世間話をした。
ついでに携帯電話のチャージもしてもらった。助かった。


しばらくして戻ってきたボス、案の定、予約は取れなかった、と。
やむをえない、予約なしでまた乗るか。


列車の時刻までまだ十分に時間があるから、
タージ・マハルを見ることを勧められたので、それに従うことに。
ジャイアンが、またさっき出会ったところまで送ってくれた。
インド版ジャイアンは、雑だけどやっぱり根は悪くなかった。

ジャイプール到着

昨日の夕方5時にジャイサルメールを出たバスは
約13時間かけてラジャスタンの州都、ジャイプールに到着。


ジャイプールは、大学の卒業旅行のときに1度来たことがある。
町の建物が赤茶色っぽいピンクで統一されていることから
<ピンク・シティ>の異名をもつそう。


早朝のバススタンドで降ろされ、まずは軽食をと、
大通り沿いにある軽食屋の1軒に入り、
注文しながら、さてどうしよう、とガイドブックをめくった。
見たい箇所はいくつかある。
でも、眠い。
宿を取って一休みしてから観光に出ようかなー。
そして出国日の10日まで今日入れてあと6日、
8日までにはデリーに入っておきたい、
そしてその前にヴァラナシには行っておきたい。
ヴァラナシはちょっと遠いから、移動時間を24時間ぐらい見ておくと、
じつはここで宿を取ったりしている場合ではないことに
朝食を食べながら気が付いた。
ジャイプールには、私の好きな城砦なんかあって
ちょっと見たかったけど、
ヴァラナシには友人もいるし、なによりも、
私がヒンディー語を習いたいと思った原点の街。
ここでヒンディーを喋りたくて勉強してきた。
だから外せない。


朝食を食べ終わり、さらにガイドブックをめくったりして
悩んだ挙句、ジャイプールを素通りすることに。


また先の中長距離バスターミナルへ戻り、
アグラ行きのバスに乗った。バスはすぐに出た。

ジャイサルメール 5日目(最終日)

キャメル・サファリから戻ると、まだ午前中だった。
部屋で一休みしていると、先日仲良くなったジャイサルメールっ子が
私が見たいと言っていた湖に連れて行ってくれるというので
出掛けることに。
そのまま、州政府のバスターミナルへ行き、
次の目的地ジャイプール行きのバスの予約チケットを購入。
出発は夕方5時。


その後、また部屋に戻ってパッキングなどしていると、
先の知人が、私が今日ジャイサルメールを発つと言ったから
プレゼントを持ってきてくれた。
ラクダの骨(!)を加工して作ったかわいらしいアクセサリーボックス。


夕刻になって、親しくしてくれたホテルのオーナーに
お礼を言ってお別れをし、オートを拾ってバスターミナルへ。
バスはほぼ定刻どおり出発。


ジャイプールは、今回最後のラジャスタンの町。
ジャイプールまで約12時間の道のり。