落慶式

ワルダーから160キロくらいのところにあるポウニーという町に
天台宗のインド人僧侶が本堂を建てられ、その落慶式に
ワルダーのお寺の方に同行させて頂いた。


朝6時半に車でお寺を出発し、約3時間走って到着。
下の写真は、道中見かけた、収穫した赤唐辛子を干しているところ。
この辺りの名産らしい。鮮やかな赤が目を楽しませる。
このように広々と四角に広げられたのが、4、5面並んでいた。
開け放った車窓から、ほんのりと赤唐辛子のまろやかな芳香が入ってきた。


10時開始の予定が大幅に遅れて11時ごろスタート。
この日のために、日本からは天台宗のお坊さんの他、異なる宗派のお坊さんやら
信者の方を含めて総勢200名強がはるばる渡印されて来ていて、
インドのこんな暑い乾いたところでたくさんの日本人を見て
ちょっと感慨深いものがあった。日本人って意外に色が白くてびっくり。


日本からは仏教僧の他に神道の神主さんも見えていて、なるほどと感心。
日本人のお坊さんが入場されるときのバックミュージックが雅楽の生演奏だった。素敵です。
ミクスチャー。インドの乾燥した大地で、笙やら篳篥(ひちりき)が鳴り響く。
どういう経緯、話し合いでこのようなスタイルをとることになったのか
とても興味がある。


落慶の儀式の祝辞を、各国のやり方でそれぞれ丁寧にされていたので、
かなり時間を要していた。それを見守る立ち見のインド人見物客、
大きなテントが広げられていたけど、もうとっくに収容人数を超え、
たくさんの人が炎天下に立ち尽くしている。
インド人の野次馬根性、と言うこともできるけども、それよりももっともっと、
彼らインド人新仏教徒ヒンドゥー教の不可触民から開放されるために仏教徒
改宗した人々)の願いや祈りは切実、壮絶だと、私は思う。
と思っていたら、人ごみのどさくさにまぎれて私は痴漢にあった。インド人だった。
人間として、どうかと思う。


おそらく生まれて初めて、天台宗(しかも比叡山のお坊さん…!)の声明を
聞いたのだけども、微妙な音調、音程の曲節をたくさんのお坊さんが一斉に唱え、
それはそれは心地良い、清らかな絹のような、捧げるに相応しい曲節で、
屋外で生で聞けてありがたかった。芸術的。
宗教は多くの側面において、芸術レベルが非常に高い。昇華だ。
機会があったらまた聞きたい。


今日の式に参加されたお坊さんの出身国、インド、タイ、チベット、日本の各国毎に、
伝統舞踊などの余興が催された。
日本からは和太鼓と雅楽と日本舞踊の3演目を披露されていて、伝統芸能
身につけている人にえらく感心した。
特に「越天楽」が始まった瞬間は強く心を揺さぶられ、鳥肌が立って涙がにじんだ。
「越天楽」の音色がインドの土地に、インドの人々の耳に響き渡った。
音が伝わる端々まで、神聖でピースフルな空間が広がった。
でもスピーカーの音質が恐ろしく悪く、めちゃくちゃに音が割れていた。
雅楽はほんとはもっともっと美しいのに、とても残念。でも雰囲気は伝わったかな。


途中で同行者に伴ってお昼に立ったので、残念ながらインドとタイの伝統舞踊を
見ることができなかったけど、戻ったらチベットの獅子舞をやっていた。
日本の獅子舞によく似ている。躍動感に溢れ、愛嬌たっぷりで楽しませてもらった。



上の写真は、本堂内の大仏。未完成。


16時半、まだプログラムは続くようだったけど、最後まで見ると帰るのが遅くなるので、
戻ることに。


落慶式会場に続く参道は、今日のために両脇に屋台やら露天が並んでいて、
乗ってきたワゴンのところまで戻る際、眺めながら歩いていると
同行者のインド人のおばさんが「あなたこれやってみる?ねえ、やりたい?」と聞くので
何だろうと思って立ち止まって見ると、ちょうど子供の客が腕の内側の部分に、
店の旦那に模様を描いてもらってるところだった。
何種類かデザインの見本がある。この中から選んで描いてもらうらしい。
たったの5ルピーらしいので、私もシンプルなデザインを選んで描いてもらうことに。
前の子供客と同じように腕の内側にお願いすると、油のようなのを薄く塗って、
おもむろに旦那がその機械の道具で絵を描き始めた。
――あ、チクチクする…と思った瞬間、やばいと思って焦って旦那に聞いた。
私「これ消える?」
旦那(手を止めて)「いいや。」
私「NO!!」
それはタトゥーを彫る機械だった。
私は不本意にも、3秒で決めた陳腐なデザインの一部を、
絵が下手くそなおっさんによって腕に掘り込まれた。正直へこんだ。
しかも機械は何の消毒もされないまま使いまわされてるから
何かの血液の感染症に罹る可能性もある、
けど、勧めたおばさんは、そんな私の落ち込み具合にも屁のかっぱで、
今日の思い出ってことにしなさいな!と無責任に言い放った。
どうしてタトゥーが5ルピー≒13円なんだろうか?
というか、小さな子がお小遣いで変てこなタトゥー入れてもらってるんですけど…。
ほぼ一生消えないのに。
私のは、うまくいけば数年で消えるかも、と同行者のインド人の1人が慰めてくれたけど、
「慰め」は「慰め」に過ぎないかもしれない…。
インド人はそのようないい加減なタトゥーを入れてる人が多くて、
同乗者の中にも結構入れている人がいて、皆、私の話を聞いてわっはっはと笑っていた。
笑い事ではない。


同行者9人、そして日本から個人でいらっしゃっていた旅行者1人を加え、
また乗ってきたワゴンに乗り込んで帰途。
途中お茶休憩などして、20時過ぎ無事帰宅。
帰りに見た夕陽、美しかった。