ドーサ

日が暮れ始めた頃、先日彼女の実家に連れてってくれたチャンダンから
いま町にいるから出て来てとTEL。私は16時になったらお隣に
御呼ばれに行くことになっていたのでそう言うと、自分もじゃあ
そっちに行く、と。え?来るの?
日本だったら、“迷惑”ということをまず考えるけど、インドでは
そういうことはないんだろうか!?もうちょっと喋れるようになったら
ゼヒインド人にとっての“迷惑”を“聞き取り調査”したいと思う。
もしかしたらチャンダンが“迷惑”を知らない世間知らずということも
考えられる。それほどおおっぴらに奔放な人物なのです。


来るな、と断ることができなかった私はチャンダンを伴って
あのー、とお隣に行くと、お母さんが案の定チャンダンも招いてくれた。
すいません、連れてきちゃって。
美味しい家庭料理をもっとゆっくり味わいたかったんだけど
チャンダンが、このあと町のレストランでバースディパーティー
すると言うので、早々と切り上げて町へ出た。あの、満腹なんですが。


そしてチャンダンに、町で薬局を営む彼女の叔父に「私のバースディ
パーティーをするから○○レストランに15分以内に来てください」
と強制的に電話させられた。なんで友人の叔父と一緒に私の誕生日会を
せねばならないのか、ちっともわからないんですけども。
そしてサイクルリキシャに乗り、彼女が道すがら言うには
インドでは、誕生日を迎えた人がパーティーを開き、みんなをもてなすのだ、
パーティーを開いた人がお金を出すのだ、それがインドの慣習なのよ、
と私に言い聞かせた。それはなんとなく知ってた。
それでも、今回パーティーをしようと言い出したのはチャンダン、あなただ。


レストランに乗りつけ、まず叔父にTELさせられた。今レストランに
着いたから早く来い、と。チャンダンはケータイを持っていないのです。
何食べる?と言うので正直満腹なんだけど、と言うと、アイスクリームを
注文することに。
アイスを注文した後、さらにハンバーガーが食べたくなったらしく
追加注文。どーぞ。うん。
とそのとき、側のテーブルの客に、大きなドーサ(パリパリのクレープ状に
焼いたものとディップが付いてくる南インドの軽食)が出され
それに触発されてチャンダンがボーイを呼んで、まだ来てなかった
3人分のアイスをさっさとキャンセルしてドーサを注文。
そうこうするうちに叔父到着。


ドーサ。後方に座っているのがチャンダンの叔父。


叔父はなんか落ち着かない、店が忙しいらしい。呼んですいません。
しかも30分前に食事を済ませたのだと。
ええ、私もそうなんですよ、と心の中でつぶやいた。でも言えない。
パーティーに呼んだのは事実上私になっているんで。
1つのベジタブルバーガーをカットしてもらい3人で食べ、
その後出されたドーサをもそもそ食べるも、3人ともお腹空いてないので
食が進まない。そこへ勘定書きを持ってボーイが来て、叔父に向かって
55ルピーと言った。私が出すより早く叔父が出そうとしたので
慌てて制したんだけど結局叔父に出させてしまい、しかも私は財布に
100ルピーより小さいお金を持ち合わせておらず、すぐに返すこともできず。
こういうときどうすればいいんですかね?つくづく人生経験が足りず。
チャンダンを突っつくと何食わぬ顔してるしで。
そして間もなく叔父は退席、店に帰ってしまった。


チャンダンは結局、はなから叔父に持たせるつもりだったらしい、
私のパーティー代。なので好きなもの注文したり勝手にキャンセルしたり
私に電話掛けさせたりしたのだ。私はチャンダンに一杯喰わされたのだ、ほほ。


「国際会議の名議長は、インド人を黙らせ、日本人をしゃべらせることが
できる人物である」という英語のジョークがあるほど、インド人は
よく喋りところ構わず持論を展開し、人を言い負かすのを得意とする国民ですが
ほんとにずけずけと言われ続け、私は内向的なのに加え言葉が不自由なので
いつも撃沈されては立ち直るのを繰り返しています。