ジョドプール

昨晩22時にウダイプールを出発したバスは、
6時間半後の明け方4時半、
ラジャスタン州に広がるタール砂漠の入り口の城塞都市、
ジョドプールに到着。


早朝出発到着する客のためのチャイ屋や軽食屋があって、
そこでチャイを飲んでいると、
待ち受けていたオートリクシャのドライバーが
「どこへ行きたいんだ?」と声を掛けてくる。
こんな夜明け前にどこにも行かないわよ、と断っても
私が座っている隣に腰掛けて「○○か?」「××に行くのか?」と
聞いてきて脱力した。


ジョドプールでは、見たいところがそれほど多くないので
半日程度で見て回って、次の場所にすぐに移動する予定なので
最初から宿を取るつもりはなかった。
バスターミナルにクロークルームが付属してなかったので
予約窓口で係員に尋ねると、私が観光を終えるお昼まで
バックパックを預かってくれることを請合ってくれた。ありがたし。


まだまだ街が動き始めるまで時間がたっぷりあって、
バスターミナルの係員に、次の目的地ジャイサルメール行きのバスの
発車時刻を確認したり、待合室で寝たりして数時間時間を潰した。
ジャイサルメール行きは結構本数が多く、5時間半で着くということなので、
13時のバスに乗ることに決めた。


9時頃になって朝食をとろうと思ったら、バスターミナル周りには
適当な軽食屋が見当たらなかったので、
オートリクシャを拾い、街の中心部辺りのローカルなレストランまで
連れて行ってもらった。


パニール・パラータ」というのを食べ、
会計をしようとしたら「25ルピー」と会計係が言うので
私「メニューには20ルピーって書いてあったけど」
会計係「ヨーグルトが付いていただろう」
私「付いてたけど…、でも頼んでないんだけど」
会計係「でも食べただろ?食べなかったか?」
私「食べたわよ、でも頼んでないわ」
会計係「25ルピー」
あーなんか悔しいけど、言い返す言葉が何も思い浮かばなかった。残念。


所持金が減ってきたので、この街でできるなら引き出しておこうと思い立ち、
預けたバックパックの中にあるカードを取りに
再びオートでバスターミナルまで戻った。
すると先ほど請合ってくれたおっさんが、
「もうかなり時間が経ったから荷物を持ってってくれ」と言い出した。
さっきは昼までって言ったのに、
それが伝わってなかったのか、それとも預かることに負担を感じ始めたのか、
何しろ荷物を自分で持って歩かなければならなくなった。


バックパックを背負って、さっき乗ってきたオートに再び乗った。
桂文珍に顔が似ているドライバーは外国人旅行者に慣れているらしく、
市内観光のコーディネートを提案し始めた。
特に予定も考えていなかったので、おっさんの提案に乗ることにした。


私がこのジョドプールに来て目指すのはただ1つ、
市内を見下ろす巨岩の上に造られた城砦、メヘラーンガル砦。
まずそこに向かってもらった。

市の中心部からオートで5分も走ると、突如として
その圧倒的な存在感の城砦が眼前に現れる。
巨石の周りをぐるぐる回るようにして上りきり、
駐車場でオートから降り、1時間後に戻る約束をさせられて城内へ。


城内では解説を聞きながら順路を回れるヘッドホンプレーヤーを
無料で貸し出していた。しかも5ヶ国語くらいバリエーションがあって
日本語もあったので、それを借りた。素晴らしいな。
だだっ広い城内を番号札を辿りながらぐるぐる回った。
欧米人ツーリストがインド人観光客と同じくらい多い。
上のバルコニーからジョドプールの町並みが一望できたのだけど、
その美しさと言ったら!
この町では、家屋の外壁をすみれ色のような青に塗る習慣があり、
「ブルーシティ」の異名を持つ。
上から見下ろすとそれがよくわかる。
これは昔はヒンドゥーバラモン階級の家にだけ許されていたそうだけど、
現在では自由にその色に塗ることができるそう。
この色は蚊除けにも効果があるらしい。


ようやく周りきり、オートに戻ろうかというとき、
城内に勤務する青年と話し込んでしまい、
城内裏手のヒンドゥー寺院にお参りに行ったり、
屋上にあたる場所から眼下に広がる青い町並みを眺めて
しばらく過ごした。
彼の家系はお父さんもお祖父ちゃんも
代々城砦の下で働いていたそうで
彼は最初、打ち上げ花火を作る別の職種についていたけど、
職場でタバコの火による爆発事故があったらしく、
それでお母さんがとっても心配したので、
お父さんの紹介で今の仕事に就いたそう。


他にも、城砦での仕事は王家の直属、つまり王家に雇われている
ということや、今の王家の人々が住む王宮のことや、
現在1人暮らしで、家賃は職場がもってくれるから不要だと
いうことや、自炊のことなどなど、1人のジョドプールの若者の
生活レベルの話が聞けて、すごく面白かった。
むしろ城砦よりも面白かった。
日本にはカースト制度のような身分制度がないと知って、
彼は驚いていた。


お母さんはとっても僕のことをかわいがってるんだと言うので
末っ子かと尋ねたら長男だと言っていた。
飾ることを知らないような、とっても素朴で天然自然な若者。
ジョドプールは、今まで見た観光地に比較すると
世にも美しい青い町並み以外にはそれほど心に強く響くものには出会わなかったけど
この青年と話せただけで、ジョドプールは私にとって
とっても好感が持て、印象深い町になった。


いろいろ案内してくれた若者にお礼を言って別れ、
駐車場で待ちわびた桂文珍似のドライバーのところへ戻り、
ほかにも現在の王宮など、見どころがあったけど
それほど興味が持てないのと、13時のバスに乗りたかったので
行かないことにした。
バスターミナルに行くと言うのに、ドライバーに
途中でラジャスタン州の伝統工芸品の店に行くことを勧められ、
気が向かなかったけど見に行ってみた。
けどやっぱり興味が持てず、すぐ退散。


バスターミナルに着き、次の目的地である、砂漠の真ん中にぽつんと開けた街、
ジャイサルメール行きのチケットを購入。
ジョドプールからジャイサルメールまで、およそ6時間の道のり。