アルナチャラ詣で(6)

その後、気を取り直してまたバイクに乗って寺院を廻ったのだけど、
だんだんおっさんといるのがキツくなってきたので、
私はティルヴァンナマライのそもそもの目的地、
ラマナ・マハルシのアシュラムに行きたいんだけど、とおっさんに
言った。
聖人ラマナ・マハルシは、世界的に有名になった人だけど
私もワルダーの知人に聞くまで知らず、ポンディチェリーに行く、
と言ったら、近いから是非行くことを勧められたんであった。


アルナチャラ詣でを結局途中で投げ出し、私とおっさんは昨晩のチャイ屋に
行き、昨晩荷物を取りに来なかったことに対してどうやら怒っているらしい
店のスタッフにお礼に100ルピー渡して荷物を受け取った。


私が昨晩戻らなかったので、たとえ荷物が丸ごと悪党に売り払われていたり、
あるいはバッグが刃物で切り刻まれて、
中身がすっかり無くなっていたとしても、仕方ないし、
あり得ることだと思って、心の準備はしていたのだけど
ちゃんと元の姿であったので、店の人の良心に大変感謝し、
ほとんど泣きそうだった。
インドという国では、その環境やら文化の違いのせいで
日本では考えられないくらい当然のように良心が欠ける場合があるのを
私は知っている。
インドをよく知る日本人の知人は、それを「正義がない」のだと言っていた。
インドで警察も含め賄賂などが普通に横行しているのもその一つ。
気持ち的には謝礼100ルピーは少な過ぎたかもしれない。
でも、1杯2.50ルピーのチャイを彼らが売っていることと、
それからここらの安宿の相場がおよそ200ルピーであることを考慮すると
それくらいが妥当かなと思った。