アルナチャラ詣で(1)

それまで小さな売店のようなのがぽつぽつとあっただけだったが、
次第にホテルなど宿泊施設や定食屋などが立ち並ぶようになり、
だんだんと通りの賑やかさも増してきた。
大きな店が増え、町の繁華街のような感じになってきた頃、
突如として巨大なゴープラム(ヒンドゥー寺院の塔門)。
圧倒的な存在感。
月明かりの中、電球で装飾されて静かに佇む姿は、
畏敬の念と安堵感を同時に抱いてしまうような
神聖さと美しさに満ちていた。


その巨大ゴープラムの真ん前にチャイの店があった。
そこでチャイを一杯飲んだ。店内から真っ直ぐに、
そびえ立つゴープラムとその奥の寺院内が見えるという、
しびれるほど強烈な場所にそのチャイ屋は建っていた。
ふと、バックパックをそこに置いて、ゴープラムの中に
参拝客に付いて行ってこようという気になり、
店のテーブルにバックパックを繋いで鍵をかけ、
店の人に、ちょっと、バックパック預かってください、と頼んで店を出た。


相変わらず、とめどなく人が後から後から押し寄せてきて、
大変な人の流れが出来ていた。
みんな、ゴープラムの中に入るのかと思いきや、そうでもないらしく
大半はゴープラムの前を通り過ぎてさらに先へ先へと歩みを進めるんであった。
…皆がどこへ向かうのか知りたい。
好奇心に突き動かされるようにして、意味もわからず
私はただ人ごみに混ざって、流れに身を任せて道を歩いた。
道の両脇は生活雑貨の商店が軒を連ね、その店の前に、
祭りのための露店が並んでいた。
果物、スナック、玩具、ミネラルウォーター、軽食、…。


時々、大なり小なりヒンドゥー寺院が道脇にあった。
ある者は中に入って拝み、ある者は外からちらりと見ただけで
先に進んでいた。


19時頃店を出てから1時間歩いても、まだ到着する気配がない。
しかも景色はさっきとほとんど代わり映えせず、
なんだか悪い夢を見ているような気になった。