ティルヴァンナマライ到着

バスは、一旦片足を浮かせると、次に着地できないほどぎゅうぎゅう詰めの
状態で、3時間弱走って目的地に到着。
広場だけの体のバスターミナルでみんなぞろぞろ降車し、
そこからは徒歩で行くのが当然、みたいなみんな足取りだったので
私もそれに続くことに。


重いバックパック背負って1kmくらい歩いたけど、数千人、数万人の
参拝客たちはまだまだどんどん歩く。
一体どこまで歩くんだろう。
ポンディのバスターミナルのときから気付いてたんだけど
みんな、手ぶらである。
近所にぶらりと出掛けるのと変わりない格好で皆、整理券の行列に
並んでいたので、最初まさか彼らが長距離バスに乗るために並んでいるとは
思いもよらなかった。


誰もヒンディーも英語も喋れないので、みんながどこに向かって歩いているのか、
あとどのくらい距離があるのかちっともわからぬまま、途中何度か休憩して
歩き続けた。
前方方向からこっちに向かって来る者もあるので、あるいは彼らは
参拝が終わって引き返しているのかもしれないと思うと
ちょっと希望が持てた。
バス停からオートに乗る、という手もあったのだけど、
もとより私は目的地を知らないので、オートを拾っても目的地は言えないし、
目的地までの妥当な料金もわからないため、ふっかけられる可能性があるので
オートは拾わないことにした。


気がつくと、いつの間にか遠くに三角の毅然とそそり立つ山が見えていた。
一目であれが聖山アルナチャラだとわかる。
高さはそれほど高くない。
辺りは徐々に暗みを増し、腕時計を見ると18時前だった。
みんな急ぐふうでもなく、家族と言葉を交わしたりしながら
ただひたすら歩いていた。
足がさっきから痛む。
重い荷物を背負って歩いているので、靴擦れができたらしい。
「次にバナナ屋があったら休もう。」などと考えながら
自分を励ましつつせっせと先に進んだ。
と、人々が一斉に歓声を上げた。
見るとアルナチャラの三角のてっぺんに火が灯っていた。
18時ちょうどだった。
ありがたい、神々しい灯りだった。
誰もがアルナチャラに向かって手を合わせ、拝んだ。
清らかな瞬間だった。