ポンディチェリー 2日目

朝、宿でポンディチェリーの地図が欲しいと相談すると
地図は無いけど、町を見て回るなら、
近くにレンタルサイクルの店がたくさんある、と教えてくれた。
マネージャーの男性、なんとなくインド人臭さに欠ける。
後々も十分に気づかされるのだけど、
ポンディチェリーの人々は大体インド人的な雰囲気があまりしない。
やはりフランス領だった歴史が長かったためだろう、
どこが違うかというと、いわゆる西洋的な“紳士的”な感じを
自然にまとっている。
田舎染みた親しみやすさがあまり感じられない。
どこか洗練されている。
でも親切は親切。


早速教えられた道を辿り、すでに10時を回って賑やかになった
通りを歩いた。
途中、露天で洋服を売っていた。
先日トップスが1着破れてしまい捨てたので、いいのがあれば
買いたいと思っていたので、ちょっと見てみることに。
レースのついた生成りの半袖ブラウス、
120ルピーを買った。300円相当。
渋谷パルコとかで3,000〜4,000円で売ってそうな、
ラブリーなブラウス。さすが、ポンディチェリー、違う。


近くの店で、チャイとドーナツで朝食をとって、
さっそく自転車を借りた。1日25ルピー。
碁盤の目に作られた町は、道路に他の町のような
インド特有の凹凸がなくて走りやすく、しばらくして海に出た。
ゴアで見ていたのはアラビア海、今見ているのはベンガル湾
カニャークマリで見ていたのは、
その2つにインド洋を加えた3つの海だった。


海岸沿いを素敵に道路が走り、沿岸は観光客や地元人らしきが
ちらほら座って、海の眺めを満喫していた。
通りを自転車で走っていると、さっき通りすがりの店で
教えてもらった、政府の観光局がちんまりとあった。
中に入るとクーラーが効いていた。
そういえばもう11月も終わりかけているんだった。
そんなことを忘れてしまうほど、南インドは陽射しが強い。
Yahoo!の気象情報によれば、ポンディチェリーでは
最高気温29℃、最低気温23℃。
朝晩涼やかだし、海側からそよ風が吹いてくるから
日中も陰に入りさえすればとても快適。


観光局で地図を手に入れ、観光スポットなどの情報も聞き、
再び自転車に乗って移動。


町には海岸と並行する運河が流れていて、海側に近い区域は
かつてフランス人の居住区だったところだそうで、
建物はみな、白、あるいは淡いグレーの壁で、
通りが必然的に明るくて汚くなく、
スケボーの練習をしている少年がいないのが不思議なくらい
道はよく整備されて見通しがよかった。
車の通りも大通り以外はそれほど多くない。
そこを海側からそよ風が吹き抜けるのであった。
建物の陰で、人々が休息したり、物を売ったりしていた。


市内のどの通りにもわかりやすく名前が表示されている。
そしてその通りの名は“Rue St. Louis”とか
“Rue de la marine”、フランス領だった時代の面影を
色濃く残している。
現地にはフランス人とインド人のハーフやクォーターも
少なくないと聞くし、現地のタミル語、英語のほか
フランス語の話者人口も多いそう。


地図を手に、日中の厳しい陽射しの中、自転車に乗って
町を文字通り縦横無尽に走り、自分の位置を途中見失ったりして
特に目的もなく奔走していたら、1日で腕が真っ黒になってしまった。
腕時計の跡を見ると、自分はこんなに白かったのかと
めずらしいものを見るような不思議な気持ちになった。
もとに戻るかちょっと心配になった。


夕方になって、インドの偉大な思想家、哲人、聖人…
オーロビンドのアシュラム(“修道場”とか訳されているのを
よく見かける。共同生活をしながらみんなで“何か(精神性とか
目に見えないもの)”を深めていくイメージ)へ。
ポンディチェリーではここがとても有名。
インドは俗っぽくて猥雑だけども、やはり精神世界の国でもある。
なので偉大な哲学者や聖者を数多く生み出しているし、
彼らによって難解な哲学書も平易に説かれて、
俗人でも少しずつ利口になる。


海岸近くのきれいな建物、外で履物を預け、門をくぐると、
そこはこぢんまりとした中庭に、よく手入れされた花の鉢が
品良く並べられ、花壇は美しい花々や草木で溢れ返っていた。
見学者がかなり多い。指示に従って奥へ進むと、
地下に彼の遺体が眠っていると思われる場所に
1m×3mくらいの大理石製の台があり、
台の上は驚くべき数の花々を敷きつめて美しい模様が描かれていた。
そして少し距離を置いて、まわりではたくさんの人々が各々
黙想、メディテーション、していた。


うろうろしていると、内部の人らしき老いた女性に
「何か探していますか?」と声をかけられた。
特に探していたわけではなかったけど、オーロビンドに
興味があるので、コミュニティーみたいなところで
何日か共同生活させてもらえないかと聞いたら、
あいにくゲストルームに空きがないと言われた。
いまポンディチェリー辺りはオンシーズンなのだ。
そのかわりに、とそこから徒歩10分くらいのところにある
オーロビンド・アシュラムが運営するゲストハウスを
紹介してくれ、泊まれるように手はずを調えてくれた。


すこし離れたところにある静かな運営事務所みたいなところで
ゲストハウスの紹介状を書いてもらい、
そのままゲストハウスに行ってチェック・インした。
紹介状のような、仰々しいような、もったいぶったような
ことをするのは、ここがあくまでもアシュラムの一部で、
すなわちオーロビンドの信奉者、または関心がある人の
ための施設であることによるもので、
そのため宿泊費は1泊50ルピー、また1日20ルピーで
3食ベジタリアンの食事を得ることができる。
当然、ゲストハウス内での薬物はもちろん、喫煙、飲酒は
禁じられている。
だから紹介状をもらうのは、一種の面接済み、みたいな
ものかと思われる。


ゲストハウスの名前は“ガーデン・ハウス”、その名が
示す通り、青々とした草木がきれいに手入れされ、
色とりどりの花々が誇らしげに咲き誇る庭があり、
私はオーロビンドもその愛弟子のフランス人女性“マザー”のことも
詳しいことを全く知らずに来てしまったのだけど
どうやら草花をことのほか愛でる人たちらしい。
私がレンタサイクルを中庭に無造作に止めたところ、
タイヤが植木鉢の葉っぱに触れたらしく
庭師のおっさんに「葉っぱを轢いちゃいかん。」
みたいなことを小声で注意された。
好感が持て、顔がほころんだ。


借りた自転車を返却し、デポジットを返してもらい、
宿に戻って荷物をまとめ、1泊150ルピーの安宿から
50ルピーの宿に移動&日中の疲労が出て就寝。