ホスペット到着

マルカプル・ロード駅から乗ったセカンドクラスの列車は
すでに満席状態で、寝台車ではないのだけど
一応座席部に寝転がれるようになっていて、座席の頭上にも
ちょうど寝転がれるくらいの部分があり、
みんな思い思いに横になり眠りに就いていた。


私は開きっぱなしの乗車口付近に場所を確保して、
バックパックに腰掛け、何もない場所をひたすら走る列車から、
面白くもなんともない夜の風景を見て過ごした。


何度か途中停車し、やがて席がようやく空いたので
荷物を持って移動し、座ることができた。


眠りたいような寝なくてもよいような心持ちで、本を読んだり
ぼんやりしていると、通路を挟んで隣のインド人のおっさんが
私に話し掛けてきたので、聞かれるがままに他愛のない話をして
過ごした。彼は元祖のほうのサイババの熱烈な信奉者であった。
カバンをごそごそやって、私にトランプほどの大きさの
サイババが印刷されたカードをくれた。
そして「サイババに祈りなさい。」と言って明け方下車していった。


明け方の車内は騒々しかった。
車内や駅構内などで見掛けるチャイ売りは普通
「チャ〜イチャ〜イチャ〜イチャ〜イ…」といった調子で
平坦かつ早口にひたすら繰り返すのだけど
この路線のチャイ売りは、個性を出そうとしているのか
「チャチャチャチャ〜イチャ〜イチャ〜イ…」と
最初のところを強調するように音を重ねていた。
トランスっぽかった。


そのほかにも、通勤通学者が乗ってきたり
足元を掃き清めては乗客からチップをねだる者や、
どういうわけか、背がすらりとして体の線の細い若い男が
サリー姿に申し訳程度にポニーテールをして女装し、
右肩あたりでパンパンと手を打っては乗客からチップを
せがんでいた。真面目なようなふざけているような顔をしていた。


9時半ごろになって、ようやく目的駅ホスペットに到着。
今回の行き先「ハンピ」はホスペットからバスで30分程度の
ところにある。