学長の娘さん

学長の娘さんから今回もいろいろお話を伺うことができた。
たとえば、カースト問題、ヒンドゥー教には4つのカーストの中に
それぞれさらに細かい“ジャーティー”と呼ばれるものがあって
属性がきっちりと決められているんだけども
異なるジャーティー同士は結婚するのが難しくて、
じつはうちの学校の寮生たちの生活係をしている男性のとこの娘さんと、
学内の庭師さんとこの息子さんが恋人同士だったんだけど
カーストが異なるために互いの両親とも結婚に反対、
その結果、庭師さんの息子は服毒自殺してしまったらしい。
5、6年くらい前の話。
生活係の人も庭師さんもよく知っている人なので、ショックだった。
ちなみに飲んだ毒物は蚊取り線香のリキッドタイプのものだったらしい。


ほかにも極端に男女の出生率に差がある地域があること、つまり
女子を望まないために生まれたわが子の命を奪う地方があること、
女子に十分な教育を受けさせない習慣がいまだにある地方や人々のこと、
インドでの離婚率が都心部を中心に増えていること、などなど。
彼女は日本の女性のあり方について関心を持っていろいろ質問されて、
逆に私は日本の環境がわりに恵まれていることを知った。


私が彼女のうちを発つ日、わかりづらい中長距離バスターミナルまで
わざわざ見送りに付いてきてくれた。
別れ際に握手をしたとき、私の頬にキスして
“I like you.”と言った彼女の目が涙で潤んでいた。
その涙のわけははっきりとはわからないけど、
でも、強くて賢い彼女もやはり、古い因習を手放さないインド社会の中で
闘いながら、苦しみながら生きているんだろうと思った。
私もムーミンママのような、賢くて愛情たっぷりの彼女が大好きだ。