ワランガル

朝5時58分到着予定だったので、ケータイの目覚ましを5時半に
セットしていた。エアコン無しの車両なのに気温が意外に低く
寝るには寒い感じだったのと、車両の揺れが意外に激しかったのと、
病み上がりで夜中寝てても自分の咳で目が覚めるのとで、
あんまりよく眠れなかった。
目覚ましで起きたら、外は雨。
起き上がって、寝台をたたんで座席を元に戻し、さっきから
通路を行ったり来たりしているチャイ売りからチャイ5ルピーを買い、
持ってきたクッキーをかじる。
向かいの座席に、起きてきた40がらみの男性が腰掛け、談話。
「もうマハラシュトラは抜けたよ、アーンドラ・プラデーシュだ。」
と教えてくれた。
アーンドラ・プラデーシュ、未知の州。


予定より20分ばかり遅れてワランガル駅に到着。
ワランガルは見所がほとんど無いのは予想がついているので
もとよりここで宿をとるつもりはない。
見終わったら次の目的地に移動する予定。


初めての土地、ワランガルは、ワルダー同様小さな町。
駅はでもワルダーよりもきれいめ。
駅にツーリスト・インフォメーションがなかったので
駅からすこし歩いたところにあったホテルのフロントで
ワランガルの見所を聞いた。


最初の目的地は、駅からも見えていた、小高いところに
作り上げられたフォート(城砦)。
岩山の上に巨石がごろごろと積み上げられている。
天然とは考えにくい。


町はまだ朝6時台なので活気はいまいちない。
人々が朝、家の前やら道路を掃き清めている模様は、インドでは
どこでも見られるのと同じだ。
重いバックパックを我ながら恨めしく思いつつ、
民家を含む建物の狭間の、参道のような石の階段を
一段一段踏みしめて登頂。
小さな町が一望できる、はずだろうけど、雨上がりのため
遠くはかすんでいる。残念。

頂上は案外狭い。
フォートと言っていたけど、そこにあるのはヒンドゥーの祠(ほこら)。
昔はフォートがあったのか。
野良犬が1匹で番犬を全うしていた。


なんとなく、気色が悪い空気感。さっさと下りた。
次はハヌマコンダ・ヒルというところにあるらしい、ヒンドゥー建築。
駅前方向にまた戻り、先程の登頂から見えた町のバスターミナルへ。
ハヌマコンダ・ヒルに行きたいのだけど、と
ホームで案内をしていた男性に聞くと、あれに乗りなさいと教えてくれた。
着席して出発を待っていると、運転手らしきが何事か乗客に知らせ、
それと同時にみんなどやどやと降車。
ヒンディーではないので何て言ったのかわからなかったけど、
とりあえず一緒になって降車。
バスターミナルは売り物を積み上げた商人や、通学の子供や学生たちでいっぱい。
じゅうぶん待たされ、それでもみんな案外平気で待っているので私も待った。


あきらめてバス以外の手段を考えていた頃、やっとバスが発車することに
なったらしく、みんないそいそと乗り出し、私を気に掛けてくれていた
先程の係員の男性が、ほら、それに乗りなさい、と教えてくれた。


バスが走り出して雨が降り出した。上空の大気が不安定そう、
などとぼんやり考えていたら、ハヌマコンダだよ、と不意に言われ、
次の停留所かと思ったら、今のがハヌマコンダだったんだよ、と
切符切りの男性。言うの遅い。
降りると言うと、運転手に言って止めてくれた。


雨が激しかったので、開店前の店の軒下で、何をしているのかよくわからない
10人を超えるラフな姿の地元男性に混じって雨宿り。


そのうち雨が小降りになり、オートリクシャ(ミニオート三輪タイプの
タクシー)を拾って、なぜか英語名、サウザンド・ピラーズ・テンプル
というところへ向かった。
ハヌマコンダ・“ヒル”というので、小高い丘へでも行くのかと思ったら、
乗った場所からほど近い、ちょっと入った場所に神社のような、
ちっぽけな寺院があった。
こ、これを見るために…。
というわけでワランガルは不発であった。


ちなみにワランガルはかつてカーカティヤ朝という王朝の都となった
町で、カーカティヤ朝の王様は、とても建築物に凝る人だったらしい。
でもその王様の名誉のために付け加えるならば、
当時はムスリムVSヒンドゥーで、領地奪取&宗教的建造物の破壊行為が
あったような時代なので、もしかしたら昔は見事な建築物が
あったのかもしれません。


そこからしばらく歩き、人に聞いてさっきとは別のバススタンドに着いた。
次の目的地はハイデラバード。ここからはそう遠くないはずだ。
列車なら2、3時間、バスなら3、4時間くらいといったところか。
バックパックが耐えれる程度に重く、もう鉄道の駅に戻るのが
億劫だったので、バスで行くことにした。
ハイデラバードに行きたいんだけど、と近くにいた警官に尋ねると
そこから少し離れたところに長距離のバススタンドがあるから
そこまでオートで行くといい、と教えてくれた。


バススタンドに着くと、数分後に出るバスがあったので
急いでチケット81ルピーを買って乗車。
9時半出発。
隣に、ひざ上丈の腰巻を巻いた、素足の男性、なんでそんなに
ラフなのか。そうかと思えば、アタッシュケースと携帯電話を携えた
ビジネスマン風の男性も乗っている。
ま、いい。寝よ。


雨季のあとで、緑が生い茂る美しくだだっ広い平原、時折、巨大な
岩山が見られるのがマハラシュトラと異なって面白い。
途中小さな町をいくつか通り過ぎ、何度目かの浅い眠りから目を覚ますと
ちょっとこぎれいな町にさしかかっていた。遠くに大きな建物も
見える。そろそろハイデラバードだ。